法事、法要、四十九日などの仏事の慣習をわかりやすく解説しています。
法事・法要・四十九日がよくわかる

お墓参りの作法

お墓掃除の仕方

多くの寺院や霊園では、毎年あるいは毎月管理料を払うシステムになっていますが、あくまでもこれは共用部分である通路や緑地、その他関連施設の維持管理のために使われるものです。個々のお墓の管理は、持ち主である家族が責任を持って行うべきことであります。
お墓参りとは「墓掃除」といっても過言ではありません。自分の家の中を掃除するように、ご先祖さまのお墓もこまめに掃除してあげたいものです。

敷地内の掃除

先ずは敷地内の掃除からです。枯れた花や線香の燃えかすなどを取り除き、雑草はむしり、落ち葉や枯れ枝、ゴミなどを丁寧に拾います。樹木を植えている場合、枝葉が墓石を覆ってしまわないようにさっぱりとせん定します。木は大きくなるにつれて根も広がり、石の柵を圧迫してしまうので、ひび割れや崩れの原因にもなります。定期的な手入れを心掛けたいものです。軍手やゴム手袋、小さな鎌やスコップ、植木ばさみなどを持っていくとよいです。
墓石のまわりに敷いた玉砂利が土に埋もれて汚れている場合は、スコップで掘り起こし目の粗いザルに入れ、水で洗ってから敷き直すと見違えるようにきれいになります。

墓石の掃除

墓石は水を含んだスポンジや柔らかい布で丁寧に磨きます。それでも汚れが落ちない場合はタワシを使いますが、金タワシは墓石を痛めるので避けます。彫刻が施されていたり、文字が彫ってあるところは歯ブラシを使うとよいです。石が欠けてしまわないように、力を入れずに優しく磨くようにします。
お墓は天然石でできているのでとてもデリケートなものです。家庭用洗剤などを使うとシミの原因になったり墓石を痛めてしまうので、水洗いを基本にします。
掃除の際には、隣接するお墓に迷惑がかからないよう十分気を配るようにします。掃き出したゴミを飛ばしたり、墓石を洗っている水をかけてしまうことのないように注意します。そして掃除で出たゴミ類はビニール袋などに入れてすべて持ち帰ります。

お墓参りとお彼岸

お彼岸は正式には「彼岸会(ひがんえ)」といいます。春分の日と秋分の日を中日(ちゅうにち)とし前後3日を合わせた7日間のことで、初日を「彼岸の入り」、最終日を「彼岸の明け」といいます。
日本では古来、春分には五穀豊穣を祈り、秋分には収穫に感謝する祭りが行われ、恵みを与えてくれる太陽へ祈りを捧げていました。一方、仏教には阿弥陀仏の極楽浄土は西方にあるとする教えがあります。「暑さ寒さも彼岸まで」といわれるように季節を二分するちょうどこの日は、太陽が真東から上がり真西に沈みます。つまりこの日沈む太陽が極楽浄土への道しるべであると考えられたのです。
こうして日本古来の太陽信仰と西方極楽浄土の信仰が結びつき、「彼岸」に往生したであろう先祖の霊を供養する彼岸会という日本独自の仏教行事となっていったのです。

「彼岸」とは古代インド語のパーラミター(波羅蜜多)に源を発する言葉で、悟りの境地、極楽浄土である仏の世界を意味します。それに対してこちら側「此(し)岸(がん)」は迷いや煩悩に満ちた世界です。
彼岸への道は、悟りを求める者、目指す者である菩薩の修行すべき道で、六波羅蜜(ろくはらみつ)という次の6つの修行を重ねなければ彼岸へと達せられないとされています。

布施(ふせ)
他人に施しを行うこと
自戒(じかい)
戒律を守ること
忍辱(にんにく)
不平不満を言わず耐えること
精進(しょうじん)
仏道を修するための努力をすること
禅定(ぜんじょう)
精神集中し常に心身の安定を保つこと
智慧(ちえ)
真実を見る認識力を働かせること

お墓参りや法要などの仏事に欠かせない水や花、線香、ロウソクなども、この六波羅蜜に関連した深い意味が込められています。
本来、六波羅蜜は日々積まなければならない修行ですが、忙しい毎日の中でなかなか実行することが難しいものです。ならばせめて年に2回は実践し、仏の悟りの世界である彼岸に渡れるように努めよう、としたのが彼岸会法要の意味であります。
現在、お彼岸には家族そろってお墓参りをするのが慣習となっています。また家庭では仏壇や仏具を掃除し、花や季節の果物、ぼたもち、おはぎ等を供え、故人や先祖の供養をします。

お墓のお供え物

[かけ水]
水は万物成長の素であり、清浄なものの象徴であります。墓石に水をかけることにより不浄を洗い流し、故人の霊を清めるとされています。また、水は亡き人に施す食べ物としての意味もあります。これは六波羅蜜における「布施」に通じ、その字の通り広く施しを与える仏尊の大悲大慈の心を表します。
仏教では死後の輪廻転生の世界として、地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天の六道(ろくどう)があります。このうち餓鬼道に堕ちた者は、水を飲もうとして口まで持っていっても、水は途端に火へと変わってしまうため、常に飢えと渇きに苦しんでいるといわれています。そんな餓鬼を哀れんで水を施し与えようというのがお墓のかけ水であります。お墓にかけた水だけは存分に飲めるのです。
こうした意味からも、お参りの際、かけ水は墓石の上からたっぷりと注いで施したいものです。

[仏花]
墓前に花を供えるのは、悲しみや苦しみに負けず、怒りや焦りなどを排し、常に明るい笑顔を持ち続けるという六波羅蜜における「忍辱」を実践する意味が込められています。
自然の花は美しく、人の心を鎮め、心の邪悪を取り除き清めてくれます。また花は仏の慈悲を表しているといわれ、仏心を培い、仏果を向上させる意味があります。

お彼岸の頃にはお供え用の仏花として、菊などを中心にセットされたものが売られていますが、とくにこれでなければいけないという決まりはありません。故人が好きだった花や、お参りする人が飾ってあげたいと思う花、季節の花など美しい花であれば種類や色は構いません。大切なのは心を込めて供えることです。
ただし匂いのきついもの、トゲのあるものなどは避けた方がよいです。どうしても生花を用意できない時は造花でも仕方がないですが、決してふさわしいとはいえません。できる限り新鮮な切り花を供えます。
一般に左右同じようになるよう対で用意し、仏の慈悲を頂くよう花の正面がお参りする人に向くように飾ります。
お墓に供えた花は枯れて見苦しくなる前に取り替えたいものです。家が遠いなど、どうしてもこまめにお参りできないようであれば、定期的に花を供え、簡単な掃除をしてくれるサービスを行っている会社もあるので利用するのもよいでしょう。

[線香]
香は邪気を祓い、不浄をすべて清める徳を持つといわれています。よく寺院などで大きな香炉からもうもうと立ちのぼる香煙を参拝者らが頭や肩、腰など身体に振りかける姿を見ますが、これも悪気を払い、病を癒し、心身を清めたいと願うところから来ています。
またその香りが四方無限に広がることから、仏の慈悲が誰彼の区別なく与えられることを表しているといわれ、一度火を灯すと燃えつきるまで芳香を放ち続けることから、六波羅蜜の一つである「精進」をも意味しています。

線香は主な原料によって、「杉線香」と「匂い線香」の2種類に分けられます。杉の葉の乾燥粉末を原料に製造される「杉線香」は杉特有の香りのする煙の多い線香で、値段もリーズナブルなことからお墓参りには一般にこれが使われます。「匂い線香」は椨(たぶ)の木の樹皮の粉末を主原料に、各種の香木や香料を加えたもので、現在広く家庭や寺院で使われています。

[灯明]
仏壇を明るく照らすロウソクの明かりが灯明です。首都圏ではあまり見られないようですが、墓前に線香とともにロウソクを立てる地域は多いです。
六波羅蜜における「智慧」に通じ、煩悩の暗闇を明るく照らす仏の智慧を表しています。灯明は一切衆生(この世に生を受けたすべての生き物)の無明を照らし、故人の霊を悟りの境地の極楽浄土へ導く重要な役割を果たしています。

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